はじめに
主催者挨拶
「フェーズフリーって、どういう考え方?」
「どんなプロダクトが、フェーズフリー性が高いといえるの?」
「サービスや施設(ファシリティ)をフェーズフリーにするって、どういうこと?」
そんな疑問をお持ちのかたも多いことでしょう。
そこで、「フェーズフリー」をわかりやすい形で皆さんに知ってもらうこと、より多くの「フェーズフリー」を皆さんに生み出してもらうこと、さらに、皆さんからの「フェーズフリー」を社会に還元し新たな気づきをもたらすこと、この3つを目的に「フェーズフリーアワード」を企画しました。
昨年の第3回「フェーズフリーアワード」には、総計234件の応募および約2,000件のオーディエンス投票をいただきました。様々なカテゴリーのユニークな事業・アイデアが集まり、応募者・投票者等が互いに触発・応援し合う場となりました。そしてまた、主催者としても、フェーズフリーの具現化に向けて必要なことを新たに発見するなど、貴重な気づきを得ることができました。
第1・2回と比べ、第3回「フェーズフリーアワード」の応募対象は、非常時の命や生活を支える内容であるのはもちろんのこと、フェーズフリーが重視する「日常性」にもきちんと配慮した提案が多く見られました。本アワードの募集意図をご理解いただけたことを実感しました。また、応募総数やオーディエンス投票数は前年を大きく上回り、このフェーズフリーという言葉と考え方が徐々に浸透してきていることを改めて感じることになりました。そこで第4回開催となる今回は、身近に広がってきたフェーズフリーを実感していただきながら、より自由で幸せになれる多様な提案のご応募を願い、以下のような新たな合言葉を掲げました。
「いつも」を良くする。「もしも」も良くする。「みんな」がほほえむ。
「みんな」が考えたビジネスやアイデアは、このアワードの中で触発しあい、また新たな気づきへとつながります。
皆さんと起こすこの気づきの連鎖が、繰り返す災害を解決する大きな力になると信じています。
たくさんのご応募、お待ちしています。
一般社団法人フェーズフリー協会
代表理事 佐藤 唯行
フェーズフリーが生まれた経緯
「災害は起きるけれど、備えるって難しい。でも、大切な人を絶対に守りたい」
フェーズフリーは、このような想いから生まれました。
そもそも「災害」とはなんでしょう、どうして起こるのでしょうか。「災害」は、「ハザード」と「脆弱性」とが重なり合うことで起こります。
地震や台風を「災害」と捉えている人も多いかもしれません。ですが、それらの自然現象は、「災害」そのものではなく、「ハザード」と呼ばれるものです。また、「ハザード」には、これらの自然現象に加え、交通システムや発電設備など、私たちの暮らしを便利にしてくれる社会環境も含まれます。このように分解して考えてみると、自然現象をなくすことはできないものの、社会環境には改善の余地があることが見えてきます。その社会環境(私たちの日常生活)に潜む、被害を誘発する要素のことを「脆弱性」と呼びます。すなわち、この脆弱性を小さくすることができれば、様々なハザードが災害にまで発展することを防ぐことができるのです。
では、脆弱性を小さくするにはどうしたらよいでしょうか。
これまでの防災的な考え方では、高い想像力 (様々なハザードを想定し、そのとき自分たちがどのような困難に見舞われるのかを、リアリティをもって思い描く能力)と、多くのコスト(万が一に備えるための時間やお金、労力、さらには防災用品を収納するためのスペースなど)が必要でした。しかし、日常生活に追われる私たちにとって、それらは容易なことではありません。
そこで誕生したのが、フェーズフリーという発想です。
「災害の芽となる脆弱性は、日常の中にすでにある」ということ、そしてまた「非常時への備えは、多くの人にとって難しい」ということ。この社会と人間の弱点を見つめてみると、「災害を減らし被害を軽減するためには、日常生活を変えることが大切」ということがわかります。それならば、「いつも」を良く(脆弱性を小さく)することで、「もしも」も良くできるようなモノやコトにあふれた世の中を目指したらどうか――そのような考え方が「フェーズフリー」です。誰もが知らず知らずのうちに災害への備えができている“豊かで安心な社会”を目指します。
フェーズフリーアワードの合言葉
「いつも」を良くする。「もしも」も良くする。「みんな」がほほえむ。
これが、フェーズフリーアワード2024の合言葉です。
「『いつも』の Happy が、『もしも』の安心につながる。だから『みんな』笑顔でいられる。」これによって実現されるのは、日常時・非常時というフェーズにかかわらず、私たちがつねに豊かで安心して過ごすことができる社会です。
いつもの生活をより豊かにしてくれるものとは、すなわち、今欲しいものや、今使いたいものです。そして、そのようなものに、今の生活の質を高めながら、同時に、災害の芽となる脆弱性を抑える効果があったなら、「もしも」も心地よく過ごすことができます。
たとえば、夏は涼しく、冬は暖かく過ごすために、多くの人が身につけている機能性インナー。それは、いざという時にも、命や健康を守るために役立つでしょう。
また、ふだんのドライブをより楽しむために燃費を考慮して選んだPHV車が、停電時には蓄電池・発電機として家族の暮らしを守ってくれたりもします。
その他にも、日頃から利用している施設や公園などが、各種インフラが途絶えた際にも近隣住民の生活を支えてくれるとしたら、多くの人が慣れ親しんだ場所で、より安心して過ごすことができます。
フェーズフリーが目指しているのは、そんなプロダクトやサービス、ファシリティが当たり前となった世の中=誰もが知らず知らずのうちに備えられている社会です。
このフェーズフリーアワードをきっかけに、そんなモノやサービスが続々と生まれ、育ち、広がっていくことを願っています。
コストであり専門的な防災から、バリューであり産業的なフェーズフリーへ
「フェーズフリー」と「防災」とはどちらも、災害による被害を減らし、人々の命や生活を守ることを目指す概念です。ただ「防災」という言葉は、その性質上、深刻な雰囲気をまといがちで、高い専門性を要するという側面もあります。そのため、防災に関する事業やアイデア提案は、一般の人には参加しにくいという実状があります。
その状況をなんとかして、防災という活動に、今までとは違ったアプローチで、多くの人が関われるようにできないだろうか? あらゆる産業が参加できるよう間口を広げることができれば、今はまだ不可能なことも、もしかして可能にできるのではないか? そう考えたのです。
また同時に、非常時のためだけに特別に備える(コスト)のではなく、日常時の生活の質を高めてくれるもの(バリュー)が、非常時にも役立ち価値を発揮できるようなものであったなら——防災はすべての人にとってコストではなくバリューになれると思うのです。
フェーズフリーは参加しやすいプラットフォーム
あらゆる産業(企業や個人)が関わりやすくなるように、「フェーズフリー」は、「防災」が必然的にまとってしまう参加しづらい雰囲気を取り払い、「誰もがもっと前向きな気持ちで、災害と共存しながらも幸せに暮らせる社会をつくる」ことを目指す概念でもあります。
このように「フェーズフリー」は、私たちの命と生活を守る新しいアイデアを生み出すためのシンプルな道しるべであり、またすべての人が参加しやすいプラットフォームでもありたい、と願っています。
フェーズフリーという指針を使って、自分だったらどんな商品がほしいか?どんなサービスがあったらうれしいか?うちの会社だったら何が作れるか?うちの組織のサービスはどんなふうに変えられるか?
こんな切り口で考えたら、新しい発明品を生み出すときのように、楽しいわくわくした気持ちが湧いてきて、多くの人が取り組みやすくなるかもしれません。
そして、誰かが別の誰かのアイデアを気に入って、触発されてまた新しいアイデアを思いつく、そんなよい循環を目指したいのです。
最初はほんの小さな思いつきでも、たくさんの人がそれぞれに育ててくれたら、世界を一変させる革新的なアイデアだって生まれてくるかもしれません。
そんなふうに日々考えているうちに、私たちの心も徐々にフェーズフリーになっていって、いつか、災害時を基準とした発想が平常時においても苦労せずできるようになり、この世界を構成するもののほとんどがフェーズフリーになる日が来るかもしれません。
ご一緒に、フェーズフリーな世界創りに、取り組んでいただけないでしょうか。
フェーズフリーアワードの概要
フェーズフリーアワードの位置づけ
フェーズフリーアワードは、「フェーズフリー」のコンセプトによって、「災害による被害が起こりにくい、安心して豊かに暮らせる」社会を実現していくための活動の一つです。
2019年にはじまった「フェーズフリーアクションパートナー」制度および「フェーズフリー認証」制度に続く、3つめの柱として、2021年にこの「フェーズフリーアワード」がスタートしました。
審査と授賞式・シンポジウムの開催により、フェーズフリーの認知度向上をはかり、またフェーズフリーの新たな知見を社会に還元し、災害と共存しながらも安心して豊かに暮らせる社会を目指します。
フェーズフリーアワードへの参加方法
フェーズフリーアワードの対象は、大きく2つに分けられます。
- すでに世の中に存在するもの(=事業部門)
- まだ具現化されていないアイデア段階のもの(=アイデア部門)
プロダクトやサービス、ファシリティなど、あらゆるものがフェーズフリーになる可能性があるため、それらすべてが審査の対象です。
また、個人・グループ・団体(企業)等、参加の単位は自由です。
さらに、審査には一般のかたがWebから投票できる「オーディエンス投票」制度もあるため、誰でも審査員として参加することができます。
フェーズフリーアワードの目的
フェーズフリーアワードの目的は、以下の4つです。
- すでに存在しているフェーズフリーなものを発見すること
- フェーズフリーの新たな知見を見出すこと
- フェーズフリーアワードエンブレムを付与したものを社会に送り出すこと
- さらに、いまだ見つかっていないフェーズフリーのよりよい考え方・取組み方を探ること
フェーズフリーアワードエンブレム
「フェーズフリーアワードエンブレム」は、受賞の証として使用することができるシンボルマークです。「フェーズフリー認証を取得していること」かつ「フェーズフリーの特性が高いこと」を示します。
※フェーズフリーアワードエンブレム(商標)の使用には、お申し込みが必要です。詳細は「フェーズフリーアワードエンブレム使用手引き」をお読みください。
フェーズフリーとは
「フェーズフリー」とは、ふだん身のまわりにあるモノやサービスを「日常時」と「非常時」というフェーズ(社会の状態)からフリーにして、いつもともしもに関わらず生活の質を向上させ、私たちの生活や命を守ってくれるものにしようという新しい考え方です。
非常時のための特別なものではなく、日常時にも非常時にも役に立つモノやサービスを普及させることによって、誰もが安心して豊かに暮らせる社会を作りたいという想いから生まれました。
※詳しくは「フェーズフリーコンセプト&ガイド」サイトをご覧ください。