応募対象の概要
東京ドームとほぼ同じ面積(4.8ha)の放牧場で、普段は繁殖牛10頭程度が牧草を食べ健康的に暮らす。ここを有事の際には、地域の家畜動物を受け入れる避難場所に整備している。感染症対策や事故防止のためにゾーン分けをし、付近の安全な沢水や備蓄飼料があるため、断水や停電時、草がなくなる冬季間でも問題はない。
フェーズフリーな性質の概要およびアピールポイント
基本的には、強固な囲いの中で牧草や雑草など最低限の維持管理をしている現状に、水源を確保するだけで避難場所としての運用ができる。運搬車両ごと入場できるゲートや感染症対策となる仕切り柵も既に整備した。あとは、安全性を担保・可視化するための、牧草の放射線量や水質検査などの定量データを把握できていれば、緊急時に安心して避難放牧ができると考える。市街地に近く、JA管内でいえばほぼ中央に位置していることから、移動だけならば1時間圏内と推測している。このような避難放牧場の整備や避難訓練の成果を、家畜動物の防災システムのプロトタイプとして構築し、広く発信したい。
カテゴリ
被害のレベル
プロブレムの種類
活用タイミング
汎用性評価
64 /100点
地域の生業を持続させるために、学校の放牧施設を活用し、高校生の教育に活かしながら、近隣住民と共にさまざまな実践ができる環境であることから、日常時の「Why」で評価が高い。また、断水や停電の際には、4.8haの広さに周辺の牛200頭を短期避難させることができ、さらに、発酵した牧草や稲わらロールを設置し、沢水をソーラーポンプで汲み上げて水飲み場も作ることができることから、非常時の「Why」で高く評価された。
有効性評価
69 /100点
近隣の牛を避難させられることで、「非常時QOL影響能力」が特に高く評価されている。また、教育施設を活用して生徒の学びと地域貢献を両立する仕組みが「機能面デザイン」でも評価を高めている。また、授業内での説明や避難訓練の実施、日々の餌やりや水の供給が、「災害想起」と「意識向上」にもつながっている。放牧施設における生徒と近隣住民のために、日常の教育効果を高めながら災害対応につなげるような学校による新たな取り組みとして、「新規創生」と「価値共有」でも評価されている。
総評
一般的な家畜管理システムと比較して、教育用の放牧施設を近隣住民とのイベントやボランティアの活動につなげ、周辺環境の現状と課題を広く考察した上で、無理のない課題解決を試みたことにより「汎用性」を高めている。また、災害時に避難を必要とするのは人間だけでなく、家畜も同様であるという視点で、餌や水を提供する環境を整え、実習や避難訓練を通じて実践できる提案となっており、これが「有効性」の評価につながったと言える。
受賞者コメント
牛舎の一部が土砂災害警戒区域であることから、家畜動物の防災・減災に資する活動に注力してきた。強固な囲いがある放牧場は、餌となる草や水が確保できれば、一定期間は人が手をかけなくても家畜の命を繋ぐことができる。即ち緊急避難場所として活用できるのではないかと考えた。普段は数十頭の繁殖牛が暮らす放牧場を、地域内家畜動物を対象とした避難場所へと整備し、避難計画の策定から避難訓練までを実施。国内でも前例のない取り組みであると、各方面から大きな反響があり、フェーズフリー性や有用性を再認識することができた。
受賞者プロフィール
栃木県立矢板高等学校 農業経営科 農業技術部