応募対象の概要
日常時には、カフェと福祉施設を融合させた市民に親しまれる公共施設として機能し、非常時には避難タワーとしての一次避難役割を果たす施設を設計した。従来の避難タワーの日頃の近づきにくさ、鉄骨の無機質な印象を払拭し、日常生活から人々の心身を守る施設を提案する。
フェーズフリーな性質の概要およびアピールポイント
人が「逃げたい」と感じるのは、災害が発生した時限りなのだろうか。普段の生活の中で、突然のストレスや圧力によってそのような気持ちが湧き上がることがある。そんな時、逃げ込める場所があってほしい。この施設は、そのような人々の思いを受け入れ、いつでも逃げ込める場所として計画した。中心に機能を配置した屋内空間と、非常時には高所に逃げ込める大きな屋外階段の二つの要素で構成される。日常時には市民に開かれた福祉施設として、また、くつろげる広場のような空間として利用される。災害時には、その階段を駆け上がって一時的に避難し、屋内のシェルターで心身を休めることができる。
カテゴリ
被害のレベル
プロブレムの種類
活用タイミング
汎用性評価
68 /100点
カフェ、高齢者福祉施設、青少年スペースを併設した複合施設で、多様な人々が自由に利用できるため、日常時の「Why」と「Who」で評価が高い。津波警報時には、屋外階段から高さ12mのデッキまで避難することができるため、非常時の「When」、「Why」で高く評価されている。2階、3階はシェルターや備蓄倉庫となり、階段やスロープの傾斜が誰にでも上りやすい構造となっている点なども汎用性を高める要因となっている。
有効性評価
68 /100点
誰もが自由に使えるカフェと福祉施設の融合が「日常時のQOL影響能力」を高め、高台避難とシェルター、備蓄倉庫の機能で「非常時のQOL影響能力」を上げている。階段の配置を工夫してオープンな空間を創り出したことで、「機能面デザイン」と「情緒面デザイン」共に評価を高めた。また、日ごろから親しんでいる心の拠り所が、人とのつながりを生み、災害時の避難を促すため、「災害想起」「意識向上」でも評価された。津波避難タワーに代わる土地の垂直利用が、「新規創生」「価値共有」の評価にもつながっている。
総評
一般的な公共福祉施設と比較して、オープンに階段を配置し、多様な人々が活用しながら、津波や水害からの高所避難を可能とした設計が特徴である。1階にカフェ、2階に高齢者施設、3階に青少年スペースを設けることで、プライベートからパブリックまで、人と時間、対応課題などで「汎用性」を高めている。津波避難タワーのような災害時にしか役立たない構造物ではなく、ふだんから使用している身近な施設が、非常時にも役立つため、「有効性」が高く評価されている。
受賞者コメント
このたび、名誉ある賞をいただき光栄である。この提案は逃げる行動は災害時だけでなく、日常のストレスや圧力から逃れる際にも重要だという考え。日常的にそんな感情を抱いたとき、その気持ちを受け入れてくれる場所が必要だと思った。
今回は可変性のある仮設ではなく、常設の建築物が適していると考え、建築学生としてこれまでの学びを活かし設計を行った。
まだ建築として未熟な部分はあるが、この提案が多くの人に注目され、どこかで少しでも活かされて、災害時だけでなく日常的にも避難できる場所が増えればと願う。
今回は可変性のある仮設ではなく、常設の建築物が適していると考え、建築学生としてこれまでの学びを活かし設計を行った。
まだ建築として未熟な部分はあるが、この提案が多くの人に注目され、どこかで少しでも活かされて、災害時だけでなく日常的にも避難できる場所が増えればと願う。
受賞者プロフィール
大阪大学大学院 石光基、町田葵