応募対象の概要
空き家となった住宅に、周辺住民が避難生活で使える物資を備蓄し、地域の防災倉庫とする仕組み。空き家自体の定期管理(清掃や通風等)と物資点検を一体業務とし、入替で持ち帰る旧物資(多彩な飲食料)は、そのまま管理業者の業務報酬に。家財撤去や大改修を伴わず、空き家に公益性・収益可能性を作り、所有者を支援する。
フェーズフリーな性質の概要およびアピールポイント
高齢住人の入院や他界で、居住者不在となり生じる空き家は多い。遠方の所有者家族が、税金や定期管理に苦労しつつ、数年掛けて家財整理や処遇検討(解体・売却・再居住等)を行うケースも珍しくない。この期間の空き家活用法は限られるが、倉庫利用なら家財が残っていてもスペースがあれば成立し、必要な改修も看板やセキュリティ程度だ。また点在する空き家が防災倉庫となれば、リスク分散の観点から合理性があり、家庭や行政の備蓄負担を緩和できる。管理業者が入替で持ち帰る物資(=報酬の一部)は自ら選択できる仕組みとする事で、仕事にイベント性が生まれ、業務パフォーマンス向上や所有者とのコミュニケーション活性化に繋がるはずだ。
カテゴリ
被害のレベル
プロブレムの種類
活用タイミング
汎用性評価
68 /100点
社会課題となっている空き家の増加に対して、防災備蓄倉庫としての活用方法と所有者の利益を生み出す仕組みを提案していることから、日常時の「When」、「Why」と「Who」で高く評価されている。また、各地に点在している空き家は、時間と場所を問わずアクセスしやすい状況にあるため、非常時の「When」と「Why」、「Who」、特に「Where」で評価が高い。不動産管理や物流のシステムは、すでに住宅販売や宅配の分野で確立されていることが、これら汎用性の高さにもつながると考えられる。
有効性評価
73 /100点
土地・建物の所有者にとって対応に苦慮する空き家管理を支援し、地域の防災に役立てる仕組みにより、「日常時のQOL影響能力」と「非常時のQOL影響能力」双方で高く評価された。さらに、備蓄の飲料や食料を地域住民や管理者で消費・循環させ、持続可能な仕組みとして提案したことで「機能面デザイン」の評価も高い。こうしたアイデアが社会実装へと発展し、普及することが期待されるため、「新規創生」と「価値共有」でも十分評価された。
総評
一般的な防災備蓄倉庫と比較して、近隣に点在する空き家を活用することで、管理の問題も同時に解決できるサービスを提案している。所有者と地域住民、管理者それぞれにとってプラスになるアイデアにより、人と時間、場所において、日常時と非常時で「汎用性」の評価を高めている。空き家に公益性と収益性を与え、清掃や通風、物資管理による持続可能性をもたらし、全国各地でローリングストックを実践する場として、大変「有効性」が高いと判断できる。
受賞者コメント
国や自治体が推奨する備蓄量を確保できている家庭は稀であり、公的備蓄拡充にも費用等で限度がある。点在する空き家を防災倉庫とできれば、社会全体の空間活用として合理性があるのではないか。この視点を軸に、空き家問題の実態や傾向、備蓄問題との共通点を踏まえ、「家具の隙間の空きスペース利用」「数年限定の賃貸方式(あくまで将来の本格利用支援)」「空き家と物資の管理業務一体化」という形を提案した。多様な関係主体がフェーズによらず豊かさを得られるバランスを探り、まちづくりの一つのあり方として検討した内容である。
受賞者プロフィール
林大地(五洋建設株式会社)